冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて
「……嘘ね。こんなイケメンでハイスペックな人があんたなんかを相手にするわけないじゃない。ここを出て行きたいんでしょうけど、そんなの許さないから。あんたが出ていくなら私、今すぐ死んでやるから」
大丈夫だと思っていたのに、お母さんから返ってきた言葉は、未だにあの時と変わらないままだった。
「お母さん、あんまり家に帰ってこないじゃん。たまに家に帰ってきて、夜私がいなかったら暴れ狂うし、帰ってきたとしても私の給料目当てじゃん。そんなに死にたきゃ勝手に死ねばいいじゃん!」
言ってはいけない言葉を口にしてしまった。でも、止められない。分かっていても、今まで堪えていた苛立ちが止められない。
不定期で帰って来ては、私がいなかったら家具や物に八つ当たりをし、家が悲惨な状態になっているため、安易に出かけることもできない。
一生、生きたいように生きられない生活はもう、終わりにしたい。
「……あんた、何言ってるか分かってるの!? 誰がここまで育てたと思ってんのよ!」
近所に聞こえそうなほどの大声で怒鳴り散らかす母。
いつもなら近所迷惑を気にして言い争いを極力避けていたけど、我慢していた糸が切れてしまえばもう関係なかった。
警察でもなんでも来てくれていい。
むしろ、来てくれた方が良い。
一生母のために奴隷のような生活を強いられるなら、刑務所にでも入った方がマシだ。