プライベートレッスン

三島光一

”カタカタカタ・・・”
慣れた手つきでノートパソコンに文字を打ち込む。何度も文章を書いては読み返して書き直すの繰り返しだ。気の遠くなる作業を永遠と続ける。
「もうこんな時間か・・・」
音のない部屋に独り言が漏れる。
「気分転換でもするか」
ベランダを開けてタバコをふかす。
冷たい風はオーバーヒートした頭を適度に冷やしてくれた。
「腹減ったな。寿司食いてぇな」
細いタバコから白い煙が出ては暗闇に溶け込む。
そしてまたパソコンに向かい文字を打ち込む。
部屋の中は「カタカタカタ」という機械的な音だけが響いていた。
“ピピピ ピピピ ピピピ”
携帯電話が鳴ったが無視して脚本に没頭する。
ここで集中力を切らすわけにもいかないから。
それから二時間ほど書て二流の脚本は見事に完成した。
文章を最初から読み返す気力もなく冷たいベッドに倒れこむ。
「あー・・・腹へった」
脳みそをフル回転させてしまったので頭が妙に冴えて眠ることができない。
「携帯鳴ってたな」
着信履歴にはアドレスに登録していない番号だった。
「間違い電話だな」と言ってそれをテーブルに置いた。
「腹減った」
枕に顔をうずめて次の話を考える。

“ピンポーン ピンポーン”とチャイムが鳴る。
「・・・こんな時間に誰だよ?」
時計はもう少しで日付が変わる時間になっていた。



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