筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む

好みの筋肉

「――きゃ……ッ」

 思わず漏れた小さな悲鳴。私の部屋に現れたのは、シャツのボタンが弾け飛びそうな胸筋の男だった。



 魔法が発達し、誰しもが魔法を使う国――トリタニア王国。私はそこで、ただの平民として生まれた。

 魔法には適性があり、誰しもが同じように同じ魔法を扱えるわけではない。特に強化魔法を他人に掛けられる人間は珍しく、同時に回復魔法も得意な私は珍しい存在で。いつの間にか孤児院出身の「聖女」として、私は地元で有名になった。

 隣国であるメルエー王国との領地を巡る争いが勃発した影響で少しでも戦力が欲しい我が国が、そんな私に目を付けるのは当然の流れで。深窓の令嬢達を押し除けて、何故か私が同い年の第二王子レオン様の婚約者の座に収まった。
 当時15歳。まだまだ子供だった私は訳も分からぬまま、王子の婚約者という尊き身分を引っ提げて。戦場後方でのヒーラーとして駆けずり回る事になった。
そうしてそこで五年間、戦で傷ついた人々を癒してきた私には、とある趣味が出来上がっていた。
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