筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む
「何故ローズは乗り気なんだ。しかも俺を慕っているなど、甘美な冗談まで……まあいい。俺にとって鍵なんぞ無用の長物……フンッ!」

 ――バキィッ!! と大きな音を立てて金属製のドアノブが根本から折れた。

「嘘ぉ……」
「しまった……あいつ、わざと華奢なデザインのドアノブに変えたな? ローズは危ないから少し離れていてくれ」

 ブレイズ様は足元にポイっとドアノブを投げ捨てて、私に少し離れるよう命じる。大人しく言われた通りにすると、ブレイズ様はドアから三歩後ろに下がって――。

「ハッ!!」

 開かないドアを蹴り破ろうと、ドアに向かって回し蹴りを喰らわせた! ……のだが。
 
――ビイイイィンッ
 
 ドアにかけられていたらしい魔法が発動し、ドア全体に赤色の紋様が浮かび上がった。そして蹴りの威力を全て吸収してしまう。これはかなり高位の魔術師にしか使えない防御魔法陣で、破るのはかなり大変なやつだ。絶対にブレイズ様と私をこの部屋から出したくないという、術者の強い意志を感じる。

「む……あいつ、本気だな」
「ブレイズ様、罠ということはきっと朝になれば出られるのですから、強行突破は諦めましょう?」

 そう言いつつブレイズ様に近寄る。とりあえずここからはどうやっても出られなさそうなので、その間にレオン様をぶっ飛ばしに行くのは諦めるように説得を試みようと考えたのだが。
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