筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む
「明日からはローズ様が君達の体調管理をおこなう。迷惑をかけぬよう適度に頼るように」

 サイモン様が肩をポンっと叩き合図してくれるので、簡単に自己紹介をして。明日からは筋肉見放題だ! と心の中でニマニマしていると。
 バーンッ!! と激しい音がして、入り口の両開きのドアが吹き飛んだ。
 
「――ローズッ!!」
「え!?」

 上宙を舞う扉二枚。そして入り口ドアを破壊したゴリラは私の方向かって全速力で駆けてくる。しかもその速度は人間より遥かに早い。

 私の横に立っていたサイモン様が溜息をつきながら宙を舞うドアに向かって手をかざし、魔法を放つ。放たれた光はドアに当たった瞬間激しい爆発を引き起こし、頭上に灰の雨を降らせた。おかげで皆ゴホゴホと咳き込んでしまう。

「ローズ、無事か? 野蛮な男達に何もされていないな?」
「一番野蛮なのは貴方ですよブレイズ様。ご覧ください、皆静かに座っているだけでしょう?」

 上半身裸のゴリラ姿のまま私を抱きしめるブレイズ様と、眉間に皺を寄せて諌めるサイモン様。

「く……るし」

 そしてゴリラパワーで抱きしめられた結果、胸筋による圧迫で呼吸困難に陥りそうな私。筋肉に埋もれて窒息だなんて素敵な響きだけど、私はまだ死にたくない。これから先も筋肉を愛てて生きるのよ!
 ぽんぽんとその胸を叩いて苦しさをアピールすると気がついたブレイズ様は慌てて解放してくれた。
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