筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む
恐ろしくて振り返れないが、後方から――バコーン! ドッカーン!! と何かが蹴られたような音が聞こえてくる。これは……何かを巻き込み蹴散らしながら追いかけて来ている音のような気がする。
『珍事! 筋肉男子祭りで赤薔薇の聖女とゴリラが追いかけっこ!?』なんて記事を新聞に載せられても困るし、この後どうすれば!?
「――ローズッ!!」
上空から怒声がして慌てて空を見上げる。そこには……逆光の中、教会の赤色ドーム屋根の上から華麗にくるりと回転して――私の前に降り立つ、下半身のみ服を纏ったゴリラの姿があった。
「いやあぁぁあ――ッ!?」
怖い。流石に空からゴリラ展開は怖い! その正体がブレイズ様だと分かっていても……いや、ブレイズ様だからこそ怖い!!
近くに居合わせてしまった子供の「ママー、空からゴリラが」なんて言っている声を聞きながら、進路が塞がれたので今度はUターンして逃げる。もはや何故逃げていたのかも分からなくなってきたし、どうして私はゴリラに追いかけられる羽目に!?
(そうだ、なぜかブレイズ様が急に色気全開で迫ってきたから……!)
逃げ出した理由は思い出したが、私はただ祭りに集まった筋肉を愛でていただけなのに! と考えた所でやっと気がつく。
「もしかして嫉――っ」
その瞬間。誰かに腕を掴まれ、路地裏に面した建物内にグイッと引き込まれた。
「誰な――……」
そこからの私の意識はない。
「ローズ……!?」
ブレイズ様が私の名を呼ぶが、その声は私まで届かなかった。
『珍事! 筋肉男子祭りで赤薔薇の聖女とゴリラが追いかけっこ!?』なんて記事を新聞に載せられても困るし、この後どうすれば!?
「――ローズッ!!」
上空から怒声がして慌てて空を見上げる。そこには……逆光の中、教会の赤色ドーム屋根の上から華麗にくるりと回転して――私の前に降り立つ、下半身のみ服を纏ったゴリラの姿があった。
「いやあぁぁあ――ッ!?」
怖い。流石に空からゴリラ展開は怖い! その正体がブレイズ様だと分かっていても……いや、ブレイズ様だからこそ怖い!!
近くに居合わせてしまった子供の「ママー、空からゴリラが」なんて言っている声を聞きながら、進路が塞がれたので今度はUターンして逃げる。もはや何故逃げていたのかも分からなくなってきたし、どうして私はゴリラに追いかけられる羽目に!?
(そうだ、なぜかブレイズ様が急に色気全開で迫ってきたから……!)
逃げ出した理由は思い出したが、私はただ祭りに集まった筋肉を愛でていただけなのに! と考えた所でやっと気がつく。
「もしかして嫉――っ」
その瞬間。誰かに腕を掴まれ、路地裏に面した建物内にグイッと引き込まれた。
「誰な――……」
そこからの私の意識はない。
「ローズ……!?」
ブレイズ様が私の名を呼ぶが、その声は私まで届かなかった。