筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む
私はその胸を手で押して離れた。
「ブレイズ様は何処?」
「どうしたんだ? 俺は目の前にいるじゃないか」
白々しく嘘をつく誰かにイラッとしてしまった私は、怒りで拳を握った。
(一応『赤薔薇の聖女』と異名を付けられるくらいには優れた魔術師なのよ、私。それをこんなに簡単に騙せると思われただなんて……)
そしてその拳に強化魔法を纏わせて――
「私のブレイズ様を返して――ッ!!」
偽物のみぞおちを目掛けて拳を打ち込んだ!
「くっ……」
身を屈めつつその口から発せられたのはブレイズ様ではない別人の声。グワンと視界が歪んで――見知った部屋だった風景は、これまた見知った別の場所へと変化した。
「……ここは、王宮の庭園?」
私は当然この場所をよく知っている。戦場に連れて行かれる前に、第二王子の婚約者として最低限の知識を詰め込まれた王宮。しかもこの庭園はレオン様に婚約破棄された場所でもある。
「どうして幻影だと分かった? それにローズは攻撃手段を持たないからこそ聖女と呼ばれていたはず……」
私の目の前、地面に片膝をついて少し前屈みになって腹部を押さえているのは――
「私が今まで攻撃しなかったのは、他人の回復と強化で忙しくて、自分の拳で殴る暇が無いからです。それに私の細腕で殴るよりも、騎士や兵士を強化してあげて攻撃してもらう方がよっぽど効率的だもの……レオン様」
――私のかつての婚約者だった。
「ブレイズ様は何処?」
「どうしたんだ? 俺は目の前にいるじゃないか」
白々しく嘘をつく誰かにイラッとしてしまった私は、怒りで拳を握った。
(一応『赤薔薇の聖女』と異名を付けられるくらいには優れた魔術師なのよ、私。それをこんなに簡単に騙せると思われただなんて……)
そしてその拳に強化魔法を纏わせて――
「私のブレイズ様を返して――ッ!!」
偽物のみぞおちを目掛けて拳を打ち込んだ!
「くっ……」
身を屈めつつその口から発せられたのはブレイズ様ではない別人の声。グワンと視界が歪んで――見知った部屋だった風景は、これまた見知った別の場所へと変化した。
「……ここは、王宮の庭園?」
私は当然この場所をよく知っている。戦場に連れて行かれる前に、第二王子の婚約者として最低限の知識を詰め込まれた王宮。しかもこの庭園はレオン様に婚約破棄された場所でもある。
「どうして幻影だと分かった? それにローズは攻撃手段を持たないからこそ聖女と呼ばれていたはず……」
私の目の前、地面に片膝をついて少し前屈みになって腹部を押さえているのは――
「私が今まで攻撃しなかったのは、他人の回復と強化で忙しくて、自分の拳で殴る暇が無いからです。それに私の細腕で殴るよりも、騎士や兵士を強化してあげて攻撃してもらう方がよっぽど効率的だもの……レオン様」
――私のかつての婚約者だった。