筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む
 (あ……回復魔法が発動していない!)

 恐らく衝撃で水晶が壊れ、服従魔法が解けたのだろう。レオン様にかけた防御魔法が切れた形跡はないので、死んではいないはずだ。しかしそうなれば魔法を維持してあげる義理はないのでサッサと魔法を解く。

 でも流石にそんな大暴れをしたせいか、警備兵が駆け付けて来た。
 
「な……赤薔薇の聖女とゴリラ!? 聖女様、これは一体……」

 五年間、戦場にいたとは言え王子の婚約者だった私の顔は、王宮で働く者に知れ渡っている。だからこそ油断して私に話しかけてきた兵士に向かって、私は狙いを澄ませた。

「――許して!」

 自分の脚力を最大限強化して、兵士の急所目がけて……詳細は可哀想なので省略します。

「……なんと恐ろしい」

 ブレイズ様がゴリラから姿を戻し、苦笑する。
 やっぱり上半身裸なブレイズ様は、どうやら今回は服を持っていたらしい。先程投げ捨てたメルエー国の姫アドラ様の近くに落ちていた上着を羽織った。
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