となりの初恋
でもそれを言ってどうしたいのだろう。


「言ったけど、それが何?」
「高橋さん、恋したことある?」


私の質問には答えてくれないみたい。
隠すこともないから質問に正直に答えることにした。


「ないよ。生まれてこの方、恋なんてしたことない。必要だと思わないし」
「何だよそれ、寂しいじゃん」
「だって誰も恋のやり方とか教えてくれないじゃん」


自分でも何を言っているのか分からなくなってきた。
まるで意表を突かれてむきになって言い返しているみたいだ。


「……じゃあさ」


櫻井海斗は座り直すと、大きい黒色の瞳で私を貫いた。


「俺と初恋、する?」


手に持った携帯が、音を立てて床に落ちた。
画面は変わらず、動画を再生している。


彼の口角が上がり、笑顔になる。
私はまだ、彼のことをかっこいいとは思えそうにない。
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