となりの初恋
ーー


まだ誰もいない教室のドアを開け、自分の席に荷物を置く。


正直、昨日のことは嘘なんじゃないかと思っている。
あの後すぐに櫻井海斗は帰って行って、私は困惑しながら図書委員の仕事を終えた。


今日だってきっと、いつもと変わらず女子に囲まれながら教室にやって来るんだろう。


そう思いながら鞄をロッカーに投げ入れた。
がらっと音がして誰かが入ってくる。


流石に無視するのは悪い。
とは言っても人の顔を見て喋るのは苦手なので、顔だけ向けて小さく挨拶をした。


そそくさと自分の席に戻り、勉強をしようと教科書とノートを出した。


どん、と隣の席に荷物が置かれる。
来たのは隣の人だったのか。


ちょっと待って、いや、え?


思わず顔を左に向けると、櫻井海斗がふわりと笑っていた。


「おはよ」

「おはよう、ございます……」


荷物をロッカーに置いて、また隣の席に戻ってくる。
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