となりの初恋
私は思考が追いつかず、手に持ったシャーペンをくるくると回すことしか出来ない。


「いやいや、え、なんで?」

「驚きすぎでしょ。ただ早く来たかっただけ」


行動の意図が掴めなくて、私は櫻井海斗の瞳をじっと見つめた。
私の顔でも面白かったのか、ぷっと吹き出す。


「……何がおかしいの」

「いやー、本当面白い。覚えてないの?昨日のこと」


いやいや、バッチリ覚えてますけど。
覚えているからこそ、こんなに困惑してるんですけど!?


「覚えてるに決まってるでしょ、何なのあれ」

「んー?言葉の通りだけど」


そう言うと櫻井海斗は私の手に触れた。
私はすぐにその手を引っ込める。


「なんで逃げるの?」

「なんでって……」


ほらもう、人気者はこんな陰キャの気持ちなんて全く分からないから嫌だ。
もしこれが女子にでも見られていたらどうする?


あなたは良いかもしれないけど、私は全く良くなんかない。
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