となりの初恋
となりの原石
『俺と初恋、する?』
自分の声と、目の前で携帯を落とす高橋さんの様子が頭の中で何回も再生される。
次第にそれは輪郭がふわふわとしていって、頭の中から消えていく。
なのに、またどこかで再生される。
「あー、なんであんなこと言ったんだろ……」
「何が?」
はい、と渡された紙パックのジュースを受け取る。
中身はイチゴミルク。
イケメンならコーヒーとか飲むもんじゃないのって思ったかもだけど、俺はそんなかっこよくなれない。
「いや、久しぶりに変なこと言った」
「だから、誰に、何を?」
隣でブラックコーヒーの缶を開けているのは友達の成田透。
俺よりも十センチ以上高い身長に、校則に違反するんじゃないかと思う金髪。
でも親がかなりの額を学校に出しているから、毎回注意止まりだ。
自分はイケメンじゃないとかよくほざいてるけど、こいつもかなり人気者だと思う。
その証拠に、毎日女子からの告白が絶えない。
「クラスの人。あー思い出したくもない」
「海斗がそんなんになるなんて珍しい。なんて言ったの?」