となりの初恋
「……と」

「え?」

「……俺と、初恋する?って」


どうにもいたたまれなくなって、イチゴミルクを音を立てて飲んだ。
嫌な音がストローに引っかかる。


「……お前それ、誰に?」

「だから、クラスの人……」


透がブラックコーヒーを口に入れる。
いつもなら苦いなんて一言も言わないのに、今日だけは苦そうな顔をした。


「海斗、それはまずいわ。女子?」

「……女子。やっぱやばいよな」

「断言する。やばい。かなりやばい。ねぇ、なんでそんなこと言ったの?」

「分かんない」

「分かんないってお前」


透に嘘をついた。
なんであんなことを言ったのか、実は分かっている。


ふわりと吹いた風が頬を撫でる。
春の屋上は少し肌寒い。


「というか誰に言ったの?海斗のクラス、可愛い子いたっけ。あ、石川ちゃんとか?」

「違うけど。てかお前人のクラスにまで手出そうとしてんのか?」

「違う違う。石川ちゃん、前に告白してきてくれたんだよね。可愛かったなーって」


……ひとつだけ言い忘れてたことがある。


そう、目の前にいる成田透という男は正真正銘のクズ男だ。
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