となりの初恋
「じゃあもうお手上げ。俺にはどうも出来ませんー」


透が立ち上がったから俺も後に続く。
近くのゴミ箱に黒色の缶とピンク色の紙パックが投げ入れられる。


人気(ひとけ)がない階段を選んで教室に戻ろうとしたけど、休み時間の女子の鋭さは尋常じゃない。


どれだけ遠くにいても、一瞬でも俺達のことを見つけたら走ってくる。
そういった観察力とか体力とか、他のことに使ってくれと思うばかりだ。


今日も案の定廊下で捕まって、透とよそ行きの笑顔を浮かべながら対応をした。
プレゼントを受け取って、些細な髪型の変化に気づいたようなふりをして。


全部当てずっぽうだけど、「可愛い」の一言でも付け足しておけば喜んでくれるから別に良い。


こんな対応をして、誰だっていいのと頬を叩かれたことだってある。


そんな台詞は俺より隣の透に言って欲しい。
透は俺よりもひどい対応を取る。


塩対応とかそんなものではなくて、むしろ正反対。
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