となりの初恋
透は求められればハグもキスも、それ以上だって簡単にする。
そうするのが、まるで当たり前のように。


俺だって優しくしようとは思うけど、好きでもない子相手にキス以上なんて出来ない。
「ハグは?」って透に聞かれたことがあったけど、上手く言えずに流しておいた。


十人ほどの対応をしてから、透と別れて自分の教室に入った。
高橋さんは変わらず、イヤホンを耳につけて携帯の画面を見つめている。


俺はわざと音を立てて椅子を引いて座った。
少しでも高橋さんの気を引きたかったから。


高橋さんは俺の足音と椅子を引く音に気がついたのか、一瞬だけこちらを見た後すぐに目を反らした。


俺は視線を反らさず、真剣な表情で画面に視線を注ぐ横顔を見つめた。


きちんと手入れされた綺麗な肌。
大きくてヘーゼル系の色をした瞳。
軽くカールがかかったまつげ。
光に照らされて輪をつくるさらさらな髪。


そのすべてを覆い隠すように伸ばした前髪が目にかかっている。
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