となりの初恋
なんだかもったいないと思った。


その前髪を似合うように切って、顔が明るく見えるようにしたらもっとモテるはずなのに。
磨けば光る原石のようだと思った。


その原石はゆっくりと俺の方を見つめ、イヤホンを耳から外すと口を開いた。


「人気なんだね、櫻井くん。いっぱい女子に囲まれて」


その言い方には少しだけ怒りとも取れるような感情が含まれていた。
もしや、と思う。


いや、そんなわけはないか。


高橋さんが俺に嫉妬なんて、するはずがない。


なのにチラリと見えた耳は、少しだけ赤く染まっているような気がした。


ねぇ、高橋さん。
少しだけ、期待をしてもいい?
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