となりの初恋
右手は自然と髪をつまんでいて、こいつの観察力には驚かされるばかり。


「で、実際どうなの?その高橋さん、だっけ」


言葉に詰まる。
俺だってどう言ったら良いのか分からない。


「……分かんねぇよ」

「また嘘言って」


透が俺の顔をのぞき込んでくる。
視界いっぱいに透の顔が映し出されて、純粋にイケメンだなと思った。


「分かってるんでしょ?本当は。自分の気持ちも、なんであんなこと言ったのかも」


そう言うと透はコーヒーの缶とバナナオレの紙パックを手に屋上から去っていった。
俺だけが取り残されて、冷たいのか温かいのか分からない風が吹く。


その風は俺に同情するかのように、頬を触っていった。



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