となりの初恋
どうしてあんな子と仲良くするのか、とでも言いたげな表情だ。


俺は在り来りな笑顔を浮かべながら窓をしめ、教室に戻った。
高橋さんが背伸びして黒板の上の方を消している。


消しきれずにいるのか、悪戦苦闘しているようだ。


「貸して」


高橋さんの手から黒板消しを取って、上の方を消した。
驚くことも怒るようなこともせず、ただ「ありがとう」の一言だけが返ってくる。


いつの間にか仕事は終わっていたらしく、高橋さんは帰る支度を始めた。
二人きりになれるタイミングはもうこれを逃したらないだろう。


「高橋さん」


鞄に向けられていた視線が俺に移る。
その視線が俺を捉えたのは一瞬で、すぐにまた手元に戻った。


「この前は、あんなこと急に言ってごめん」

「別に良いよ、気にしてないし。からかいでしょ?」


からかいとか、遊びなんかじゃない。
気を引くためと言ったらそうなるのだけど、少なくとも俺は本気だ。
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