となりの初恋
ちら、と伏した目でくじに書かれた文字を見て、すぐに近くの女子に報告する。


それを見て他の女子も櫻井海斗の席を聞き出そうと、みんなどんどん席を立っていく。


先生、生徒が立ってますよ。
これ注意しなくて良いんですか!


そう視線を送っても、先生は何も気にする素振りを見せない。


いやいやいや、生徒って必要ないときに席を立ってはいけないはずなんですけど!
ため息をつきながら私も席を立ち、教卓に向かう。


どうやら櫻井海斗の隣の席はまだ決まっていないらしく、女子が手を合わせて祈っている。


どれでもいいや、と手を突っ込んで一枚引いた。
席に戻りながら確認すると、髪を綺麗に巻いた石川さんが私の方に走ってきた。


「高橋さん、席どこだった?」
「席?二十三番」


石川さんはただでさえ大きい目を見開き、ぱんっと手を合わせた。


「お願い、席変わって。海斗くんの隣になりたいの」


なるほど、私は最も似合わない席を引いてしまったらしい。
< 3 / 82 >

この作品をシェア

pagetop