となりの初恋
「私の方も完了。よし、これで喋っていられる」


沙耶ちゃんはカウンターに、わたしはその脇のソファに座る。
カウンターの椅子をくるりと回して、向き合ったら準備完了。


「で、どうなのよそっちは。海斗くんと」

「別に一日二日で変わらないよ」

「何それ、つまんない。海斗くん、意外と消極的な感じ?よし、ここはうちがいっちょ」


ボケて笑いでも取ろうとしていたのに、ドアが開いた音によってかき消された。
沙耶ちゃんは高速で椅子を戻し、わたしも近くにあらかじめ置いておいた本を手に取る。


お喋りなんかしてません、とでも言うように背筋をぴんと伸ばした。


「あれ、石川ちゃん?」


耳なじみのある声に思わず振り返る。
そこには海斗くんと、仲が良い透くんがいた。


「櫻井くん、また来たの?」

「うん、今日こそ借りようと思って。おすすめまた教えて」

「分かった、こっち来て」


沙耶ちゃんと海斗くんの二人が奥の方に消えていって、カウンター近くにはわたしと透くんが残された。
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