となりの初恋
それどころか、この人に囚われ続けている。


高くて沙耶ちゃんが取れない本を、軽々と海斗くんが取っている様子が目に入った。


「お、海斗かっこいいじゃん。沙耶ちゃんは海斗のこと、何か言ってる?」


素直に答えれば良いのに、喉からすんなりと言葉が出てこない。
わたしのことはずっと名字にちゃん付けなのに、沙耶ちゃんのことはすぐに下の名前で呼んだ。


「いや、別になんとも。まぁ、ちょっと気にしてるとは言ってたけど」


たったそれだけのことかと笑われるのが怖かったから言わなかったけど、そのことがわたしの中でぐるぐると回り続けて残ったまま。


なんでなんだろう。
わたしは何一つ上手くいかないのに、沙耶ちゃんは違う。


誰かに好かれて、欲しいものをどんどん奪っていって。


そこまで考えて、自分が最低なことに気がついた。
これは嫉妬だ。


嫉妬なんてものは醜い感情で、いつしかその感情を抱いた者を壊していく。
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