となりの初恋
でもわたしは、その感情を抱かずにはいられなかった。


わたしの右手はスカートの裾を強く握りしめていて、左手は透くんと重なっている。


わたしはその左手を振り払って、鞄を掴むと走って図書室から出た。
透くんがわたしを呼ぶ声が聞こえる。


名字にちゃん付けな呼び方は変わらなくて、それが余計にわたしを惨めにさせた。
鞄を肩にかけ直して、下駄箱に着くと上履きを地面に投げた。


適当に足を突っ込んで、急いで学校から出る。
かかとを踏んで靴を履いていたけど、そんなの気にしない。


家に向かってある程度走った後、わたしは止まった。


ゆっくりと振り向いてみるけど、後ろには誰もいない。


ほら、やっぱり透くんは誰だって良い。
わたしのことなんてどうも思っていない。


少しでもわたしに好意を抱いていてくれているんだとしたら、追いかけるとかするだろう。


なんで期待なんかしてしまったんだろう。
< 39 / 82 >

この作品をシェア

pagetop