となりの初恋
傷つきたくない。
嫌われたらどうしよう。


だってきっと、櫻井くんは私で遊んでいるだけだ。


遊べそうだと思ったから、私に話しかけて、よく分からない台詞を吐いて。
絶対にそうだ。


花菜ちゃんが「海斗くんは沙耶ちゃんのこと、絶対に好きだよ」って言ってくれていたけど、友達に嫌われないようにお世辞を言っていると思った。


「……なんでこんなに悩んでんだろ」

「ん？何か言った？」

「ううん、何も」

「そう。じゃあこれ、返却お願いします」


差し出された本のバーコードを読み取って、パソコン画面の処理をする。
櫻井くんは棚に本を戻しに行って、他に良い本がないか探している。


不思議でならない。
どうして、櫻井くんが私に時間を割いてくれているのだろうか。


カウンターに頬杖をつきながら、本を手に取って試し読みをする櫻井くんの横顔を見つめた。


「……綺麗な顔」


まるでその声が聞こえたかのように、櫻井くんは私の方を向いた。
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