となりの初恋
「嫌だよ、だって沙耶ちゃん初恋でしょ？初恋は自分で頑張るものよ」


自分で頑張るって言ったって、どうしたら良いのか分からない。
本当に恋愛経験がなさ過ぎる。


「あ、透くんと海斗くんだ。ほら沙耶ちゃん、頑張ってね」


引き留める私を横目に、花菜ちゃんは龍也くんの方に向かって走っていく。
それと引き換えのように、櫻井くんが私の隣の席に座った。


眠いのか、先程までの私と同じような姿勢で机に突っ伏す櫻井くん。
明るめの茶髪が窓から差し込む光に照らされる。


「……櫻井くん」


私の声に反応して、櫻井くんが顔を上げる。
綺麗な瞳は、真っ直ぐに私を見据えていた。


「……高橋さん、どうしたの？」

「櫻井くん、この間は、ごめん。私、嫌なこと言っちゃったかなって」

「いいよそんなの。気にしてないし」


素っ気ない態度だった。
すぐに視線を反らして、また机に突っ伏す。
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