となりの初恋
透くん、櫻井くんに連絡もしていないんだ。
なんだか透くんらしいな。


つま先を床に打ち付けて、靴をしっかりと履いたら階段に向かう。


櫻井くんが隣にいるけど、これは何?
私と一緒にいたいってこと?
いやいやいや、そんなわけ。


「切ったの?髪」


櫻井くんからは聞けないと思っていた発言に、心拍数が上がっていく。


隣の席とは言えど、大して気づいてくれないんじゃないかななんて思っていたから、余計に。


「あ、うん。なんか、変な感じ」

「そう?似合ってると思うよ、可愛い」


私は勢いよく首を回して、櫻井くんから顔を背けた。


今聞きましたか、可愛いって!!
似合ってるだけでもかなりのダメージだと言うのに、可愛いまでつけてくるなんて……


流石はモテ男、櫻井海斗。


「……櫻井くん」

「ん?うわ、危ね」


階段でつまづきそうになっている櫻井くんを横目に、私は緊張しながら口を開いた。
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