となりの初恋
想いが溢れて、どうしようもなくなって、涙がこぼれてしまいそうになるのは、分かる。


なのに、どうして私が?
何が私を悲しくさせた?


隙間から見えた優しげな表情?
断るなんて考えはなさそうな、温かい声色?


いや、きっと違う。


誰かに櫻井くんがとられるかもしれないという、不安。


きっとそれが、私を悲しくさせた。


本棚に背中を預けるようにしながら、潤んだ瞳を擦った。
誰かが来る気配は全くない。


誰でも良いから来て、慰めてくれたら良いと思うのに。


「……もう、分かんないよ」


そう呟いたところで、誰からも何も帰ってこない。
図書室のこういう所が大好きだったのに、今はやけに寂しい。


そろそろカウンターに戻ろうと、立ち上がった瞬間、ドアが開く音がした。


「ごめん高橋さん、遅くなった。ちょっと先生に呼び出されちゃって」


……隠す、んだ。
他の子に告白されたって、私には教えてくれないんだ。
< 77 / 82 >

この作品をシェア

pagetop