となりの初恋
「櫻井くん」


櫻井くんは少し恥ずかしそうに、この後の台詞を待っている。
私が何を言おうとしているのか、分かっているのだろうか。


胸の鼓動がうるさい。
初めての告白はもっと緊張するかと思っていたけれど、案外そうでもないみたい。


「好きです。私で良ければ、付き合ってください」


そう言ってから、櫻井くんの返事が返ってくるまでが、異様なほどに長く思えた。
無限の時間というか、時間がゆったり流れているというか。


とにかく、その時間の私はそわそわとして落ち着きがなかっただろう。


「俺も、高橋さんが好きです。よろしくお願いします」


櫻井くんがいるソファから腕が伸びてきて、私の手のひらを包み込んだ。
今まで壁でもあるかのように、どちらも触れなかった手。


その温もりは、何にも代えがたいものだった。


「いやー、緊張した。告白じゃなかったら何かと思ったよ」

「緊張したはこっちの台詞。人生で初の告白だよ」
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