となりの初恋
こっち来て、と手招きされて、私はカウンターを出る。
長らく座っていなかったソファに腰を下ろし、櫻井くんのことを見つめた。


「え、もしかして、俺のために髪切ってくれたの?」

「……そう。告白を彩ろうかなと思いまして」


なんだかよく分からないことを言っているけど、それすら櫻井くんは優しい微笑みで包み込んでくれた。


その笑顔に、胸がきゅっと締め付けられるような感覚がする。
好きだ、と思う。


「あーもう、好き……」


腹いせに、櫻井くんの胸板に頭をぐりぐりと埋めてやった。
櫻井くんは驚いた様子だったけど、すぐに私を抱きしめてくれた。


「……ねぇ」

「何?」

「好きだよ、海斗くん」


大きいため息が耳元で聞こえてきて、私はくすっと笑う。
海斗くんは顔をほんのり赤くしながら、恥ずかしそうに笑っていた。


と思ったらいきなり身体を引き寄せられて、海斗くんの口が耳元に近づく。
< 80 / 82 >

この作品をシェア

pagetop