ハニー&クールな双子は再会した幼馴染みを愛しすぎている
「すっ!? 翠くん!?」

「もー、俺がメモ取ってきてる間になにしてんの?」


 言葉通り、翠くんの手には見覚えのあるメモ用紙があった。


「あ、ありがとう」


 どうやって取ってきてくれたのかはわからないけれど、本来は私が取ってくるはずのものだったから、ビックリしてドキドキしている胸を押さえてお礼を口にする。

 でも、翠くんは「どういたしまして」って笑顔で言いながらなんだか雰囲気がいつもと違っていた。

 近づいてきた翠くんは、ベリッと音がしそうな勢いで私から蒼くんを引き離す。


「確かにここに連れてけって言ったのは俺だけど……抜け駆けするのはちょっとずるいんじゃないかな? 蒼」


 いつもの明るい笑顔なのに、どこか笑っていない様に感じる翠くん。

 蒼くんは、不満顔でそんな兄を責めた。


「……お前の方が抜け駆けしてたじゃねぇか。翠」

「ん? なんのことかな?」

「引っ越してきた日。再会したばっかりの奈緒に抱きついてただろ?」

「っ!?」


 見てたの!?

 あのとき、翠くんに抱き締められて『食べちゃいたい』なんて言われたことを思い出し顔に熱が集まる。

 先に家の中に入っていたはずなのに、どこから見てたんだろう?


「なんだ、見てたのか。でもあのときは蒼、奈緒ちゃんのこと拒絶してたじゃん?」

「あのときと今じゃ違うだろ?」

「まぁねー。俺が何度も奈緒ちゃんなら大丈夫だって言っても頑なだったくせに、ちょっと奈緒ちゃんと過ごしただけで手のひら返すとか。蒼チョロすぎー」

「んだと!?」

「ちょっ、ストーップ!」


 ヒートアップしていく兄弟ゲンカを私は間に立って止めた。


「とにかく、買い出し行こう! 遅くなっちゃうし!」


 私の必死の提案に、二人は渋々と口を閉じたのだった。
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