女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
彼女のことは嫌いだが、ここに医者もいることだし、体調がよろしくないなら、見てあげればと玲央を見たのだが、玲央は、舞子さんの様子を観察しているようだった。
最上さんは、何やら慌てたように彼女を後ろに隠した。
「先ほど強いお酒を飲まれたようで、今から、休んでもらおうとしてたところなんですよ」
「そうだったんですね。足止めして申し訳ありません」
「いえ、それじゃ失礼します」
彼女を引っ張るように会場を出ていくのだ。
「亜里沙、ここにいて」
「えっ、どうして?私と離れない約束でしょ」
「そうなんだけど…さすがに…はぁ、時間がないから仕方ない。何を見ても声出さないでね」
「わかった」
玲央は、最上さん達の後を追うように隠れてついていくと、パーティー会場とだいぶ離れた物静かな場所にある多目的トイレへ入っていく。
忍び足で近寄り聞き耳を立てる玲央に、思わず腕をつねったのだ。
体調が悪く、吐く姿を誰にもみられたくなく、ここまできたのではと。
だが、中から聞こえてきたのは、女性の艶めかしい声と男の罵声。
「ほら、雌犬、もっと鳴け」
肌同士がぶつかる音に、中で何が行われているのか、私にでもわかってしまい、声を出さないように口を押さえる。