女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
・穏やかな生活を送りたいこと…「送れるよ」
・自由に生きてみたいこと…「…」

感情が昂って、うまく心の中を話せなかったが、玲央は、ただ、優しく頷いて言葉をかけてくれた。

顔を覗くように体を離されて、散々、恥ずかしい姿を見せたというのに、泣き顔をみられるのは恥ずかしく、手の甲で涙を拭おうとした手を掴まれて止められた。

「擦ったら腫れてしまうよ」

ポケットチーフで、優しく涙を拭いてくれた玲央は、私の頭を撫でて、そのまま抱きしめてくれた。

「昔、僕が亜里沙に言った言葉覚えてる?」

「…」

玲央の腕の中で、なんのことかわからず首を振る。

「君をいつか連れ出してあげる」

そう言えばと、遠い記憶がよみがえるのだ。

あれは、小学部に上がってからだった。

今まで仲良くしていた友達達から、突然、敬遠されるようになった。

その理由にはいくつか思いあたるのだが、久世家の本来の役割を知る親により、関わりを持ちたくないと敬遠され、また、知らぬ者からは田舎の地主などの子と仲良くするメリットがないという理由なら、子供ながらも、冷静に納得できた。

だが、理央の元に集まる男子達と私が仲よくすることが気に入らないという理由で、女子からはぶられることが悲しかった。
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