女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
なぜ、理央ではなく理樹なのかと疑いもせず、そっか…と、笑み浮かべ、そっと見られないように家を抜け出した。
そのすぐ後、家で大騒ぎな事件が起こっていたとは知らないで、理樹の車の後部座席に隠れるように乗ったのだ。
しばらく走って理樹から体を起こして大丈夫だと言われ、辛い姿勢からやっと、座面に腰を下ろせた。
「協力してくれてありがとう。でも、どうして理樹なの?」
「…まぁ、いろいろとお互いの事情で。亜里沙は、知ってるんだろう⁈あいつで本当にいいの?」
「えっ、理樹にバレてた⁈そっか…最近になって私も知ったのよね。そっか…」
「…まさか今まで気がつかなかったのか?樹里と母さんは兎も角として、お前は気づいてると思ってたよ。それでも、あいつを選ぶんだ⁈」
「それでも?うん、そうだね。彼の前なら、私らしくいられるって気づいたから、離れたくない」
「ふーん。亜里沙がいいなら反対しないけど。はぁっ…あんな奴を義兄さんと呼ばないといけなくなるのかよ。最悪だ…」
「最悪ってなによ。私の周りに玲央ほど優しい男いないよ。それに…なに、その…結婚してもいないのに義兄さんって」
「…いや。わかった。もう、何も言うな。俺も余計なこと口走りそうだ。着くまで黙ってろ」