女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
「足りなければ買えばいいさ。受付して船に乗ろう」
玲央に促されて受付を済ませ、夕日が沈んでいく光景を見ながら、船内に乗船した。
「これで、誰にも邪魔されない」
ぽつりと拾った呟きに、玲央の数々の重い執着と腹黒い計略が達成される歓喜からくるものだったのだが、亜里沙は、この時の玲央の感情に気づけない。
夕焼けに胸を高鳴らせていた。
「玲央、連れ出してくれてありがとう」
「…感謝されると心が痛むよ。全ては、僕のわがままだ。連れ出してごめんね」
玲央が謝る理由になんて心当たりがない私は、首をふる。
「謝らないでよ。玲央は私を思って準備してくれたんでしょ。思いっきり楽しもう。ね?」
「ほんと、参るよ。でも、後戻りするつもりないから、楽しもう」
「うん…あのさ」
「なに?」
「受付で確認されたけど、島々を巡る日本一周でしょ。結構なお値段になったよね」
「あー、そんなこと。久世家のお嬢様なのに、昔から律儀だよね。出すとか言わないでよ。これは、僕の為に必要な出費。亜里沙は一円も出したらダメだよ。あっ、カードもね。ついでに携帯の電源も切っとこう」
「携帯?」
「うん、自由に思うまま楽しむ約束だよ。折角の自然豊かな海と島々を船で旅するんだ。邪魔が入るようなものはしまっておこう」