女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に

デッキでは大勢の人達が、大きく鳴る出港の合図の汽笛と、繋がれているロープが解かれて、港から離れていく様子に、期待で胸を膨らませている。

夕陽が、海へ沈み薄暗くなる中、私達は、人目も憚らずキスをする。

きっと、気持ちが大きくなっていたのだろう。

誰も私達など知らない世界。

ひやかしの口笛が鳴るが、それさえも心地よい。

誰も、私達を見ても引き離そうとしないのだから…

陸から離れ、人々は、船内へ入り、思い思いに行動するのだろう。

だが、私達は、動けずにいた。

「…れお、好きだよ」

ぎゅっと彼の背に腕を回して抱きついていた。

私は、初めて気持ちを伝えることができたのは、この広い海と綺麗な夜空のせいだったのかもしれない。

「ありす、嬉しいよ…嬉しすぎる。言わないって選択もあったのに、気持ちを伝えてくれてありがとう。だけど、俺の方が何倍も好きだよ。愛してる」

彼の愛の言葉が重く感じ、ゴクリと生唾を嚥下して、見つめ返す。

「キスだけじゃ足りなくなりそうだ。はぁぁ…辛い…」

今まで感じたことのない色気と甘い吐息に、赤面し、顔を玲央の胸に埋めてしまうのだ。

「ごめん、ちょっと離れようか?」

「えっ?」

< 43 / 74 >

この作品をシェア

pagetop