女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
デッキでは大勢の人達が、大きく鳴る出港の合図の汽笛と、繋がれているロープが解かれて、港から離れていく様子に、期待で胸を膨らませている。
夕陽が、海へ沈み薄暗くなる中、私達は、人目も憚らずキスをする。
きっと、気持ちが大きくなっていたのだろう。
誰も私達など知らない世界。
ひやかしの口笛が鳴るが、それさえも心地よい。
誰も、私達を見ても引き離そうとしないのだから…
陸から離れ、人々は、船内へ入り、思い思いに行動するのだろう。
だが、私達は、動けずにいた。
「…れお、好きだよ」
ぎゅっと彼の背に腕を回して抱きついていた。
私は、初めて気持ちを伝えることができたのは、この広い海と綺麗な夜空のせいだったのかもしれない。
「ありす、嬉しいよ…嬉しすぎる。言わないって選択もあったのに、気持ちを伝えてくれてありがとう。だけど、俺の方が何倍も好きだよ。愛してる」
彼の愛の言葉が重く感じ、ゴクリと生唾を嚥下して、見つめ返す。
「キスだけじゃ足りなくなりそうだ。はぁぁ…辛い…」
今まで感じたことのない色気と甘い吐息に、赤面し、顔を玲央の胸に埋めてしまうのだ。
「ごめん、ちょっと離れようか?」
「えっ?」