女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
ここまで…長かった。
やっと…チャンスがやってきた。
今日、俺は長年の計略に踏み切ることになる。
壇上にいる亜里沙を見つめ、彼女に微笑み手を振るのだ。
当主の挨拶が終わり、一旦奥へ引っ込んでから当主と理央は挨拶まわりに戻ってくる。
それさえ済ませて終えば、彼女と待ち合わせた部屋で待つだけの今日。
あぁ…早く、また彼女に触れたいと思いを馳せるのだ。
数週間前にあった、無駄な交流会という名目で毎年ある集団見合いは、上流階級の男女の出会いの場として開催される。だが、いい男、いい女、家の格が高ければ、既に相手は大体決まっているようなもの。
出席する者は、本気で今後の為に交流を楽しむ者か、結婚相手が決まらず必死な者か、俺たちのように仕方なく出席してる者に別れる。
俺や千紘は、亜里沙から離れる気はなく、あちこちからの苛立つ視線を感じる。今日の亜里沙は心が疲れ弱っているようで、憂鬱そうだ。そんな姿は、心配でもあり、喜んでいる自分は、やはり、壊れている。
「化粧を直しに行ってくるわ」
そう言い、ストレス発散の為に吸い始めたタバコでも吸いに行ったのだろう。
亜里沙が側からいなくなれば、化粧や香水臭い女達が群がってくる。