女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
俺が何をしたかは、誰も知らないし、言う必要もない。
集団が二手に別れ、亜里沙のいるレストルームを見つけた集団は、合流して、中へ入っていったようだ。
俺も、出口まで近寄り、壁に寄りかかり腕を組んで聞こえてくる会話に耳を澄ます。
聞こえてくる腹立たしい内容に、腕を組んでいた自分の皮膚に爪を食い込ませ我慢する。
だが、亜里沙は俺の女王様だ。
黙ってやられる女じゃない。
完全にやり込まれて何も言い返せなくなり、俺は鼻先で笑っていた。
毎回、勝てもしないのに、なぜ、亜里沙に絡もうとするのか⁈
聞き捨てならない会話の内容が聞こえてきた。
最上 隆哉、あちこちで悪い噂が絶えない男。
「私が、最上さんに亜里沙さんのことお勧めしておきましたのよ。ポッと出同士でお似合いですわよ」
最近、俺たちが側にいるにも関わらず、やたらと図々しく声をかけてきて、亜里沙のメンタルを削る存在に苛立っていたのだ。
「私が好き好んで…あなたも落ちればいいのよ」
叫ぶ声の後、俺は隣の男子用に身を隠す。
足音が遠退き、誰もいないことを確認した俺は、レストルーム内の清掃道具扉から、使用禁止の看板を出して、女性用前に立てかけた。