女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
堅物で、実直すぎるがゆえ、曲がったことが嫌いで、無駄に愛想を振りまくことが苦手な千紘。
水と油のような2人だと私は思っている。
そんな2人の性格をわかっている理央が間に入り、まとまるのだ。
玲央と視線があい、人好きのする笑顔で手を振る彼に、冷ややかな視線を送るも、なんというか幼馴染なこともあり、気を許せる数少ない相手だからか、憎めない男。
「残りの時間をお楽しみください」
父の声にハッとなり、皆と一緒に頭を下げ、一旦、奥へ引っ込んだ。
「理央は、私と挨拶まわりに来なさい。亜里沙達は?」
「私は、パス。最後の挨拶まで、ゆっくりしてるわ」
「俺も」
理樹は口元を隠して面倒くさそうに欠伸までする。
「私は、折角のお着物だし、いつものようにお父さん達といるよ」
樹里は、着物が似合っていてお人形のように可愛い。父は、目尻を下げてでれっとして威厳はどこへ。
「そうか…梨沙はどうする?」
「私もパス。これでも受験生なの。勉強してる」
来年と言っても、後、数ヶ月だが、大学受験を控えている梨沙は、勉強を理由に逃げるようだ。
進む大学は、試験はあるものの、今までの系列の大学なので、よほどのおバカさんじゃない限り落ちることはない。