女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に

堅物で、実直すぎるがゆえ、曲がったことが嫌いで、無駄に愛想を振りまくことが苦手な千紘。

水と油のような2人だと私は思っている。

そんな2人の性格をわかっている理央が間に入り、まとまるのだ。

玲央と視線があい、人好きのする笑顔で手を振る彼に、冷ややかな視線を送るも、なんというか幼馴染なこともあり、気を許せる数少ない相手だからか、憎めない男。

「残りの時間をお楽しみください」

父の声にハッとなり、皆と一緒に頭を下げ、一旦、奥へ引っ込んだ。

「理央は、私と挨拶まわりに来なさい。亜里沙達は?」

「私は、パス。最後の挨拶まで、ゆっくりしてるわ」

「俺も」

理樹は口元を隠して面倒くさそうに欠伸までする。

「私は、折角のお着物だし、いつものようにお父さん達といるよ」

樹里は、着物が似合っていてお人形のように可愛い。父は、目尻を下げてでれっとして威厳はどこへ。

「そうか…梨沙はどうする?」

「私もパス。これでも受験生なの。勉強してる」

来年と言っても、後、数ヶ月だが、大学受験を控えている梨沙は、勉強を理由に逃げるようだ。
進む大学は、試験はあるものの、今までの系列の大学なので、よほどのおバカさんじゃない限り落ちることはない。
< 6 / 74 >

この作品をシェア

pagetop