女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に

理央は、出会った時から、どこか壊れている俺を面白がって側に置いているし、当主は、父親同士の交流から、相談されて理央との出会いがあったわけなので、本来の俺を危ぶんでいる。理樹からは、野生の感のようなもので毛嫌いされている。

理央の側近になれる一人の人間としては認めてくれてはいたが、亜里沙の許婚としては俺を危ぶんでいた当主は、俺のストッパーに千紘を側に置くようにした。

亜里沙の許婚候補としてのライバルが現れて、心穏やかでいられない。

真面目で、堅物、俺と違い心根も実直なのだ。

悪く言えば、面白みもない男。そんな男が当主のお気に入り。

自分以外の男が、亜里沙の夫になるなど許せるはずもない。

千紘よりも、亜里沙が頼れて、心許せる男になるよう努めてきた。

「玲央は、優しいから、患者さんの心に寄り添う心療内科医が似合うと思う」

その一言で心療内科医としての道を選んだ。

本来の俺なら、外科医としてメスを握っている方があっている。

だが、亜里沙がそう望むなら、優しく、寄り添う医者も演じようと、今の俺があるのだ。

それは全て、彼女の為に。

彼女との未来のために、ここまできた。

ホテルの部屋のドアをノックする音に、意識が戻ってくる。
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