女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
「えっ?」
「…誰にも内緒でどこかへ旅行しない?」
「なに言ってるの?」
「亜里沙…僕は本気だよ」
「えっ?本気?」
「後悔したくないんだ。そして、ありす、君にも後悔してほしくない。結婚前くらい、心のまま自由に生きて、一度くらい思うままに楽しもう。僕と思い出作りしてほしい。帰ってきたら、役割を果たす為に、自分達の本来の場所に戻ろう」
亜里沙を一生、手放すつもりはない。
彼女の心が揺れるなら、容易く口から彼女のほしい言葉を言える。
「泣かないで…泣かせたかったわけじゃない。ごめん。一言言ってくれるだけでいいんだ。亜里沙が楽しめるように準備するから…お願い…僕に、命令して」
「私を連れて行って」
ほら、待っていたように答えてくれる。
俺が、何を企んでいるかも疑わない優しい亜梨沙が、大好きだよ。
「ほんと⁈やった…もう、誰にも邪魔させない」
久世の当主にも、理央にも、千紘にも、邪魔させない。
そこへ電話が鳴った。
「ごめん、ちょっと出るね」
携帯をポケットから取り、買っておいたストッキングを亜里沙に渡して、電話に出た。
電話の相手は勅使川原だった。
要は、俺と勅使川原、そして樹里ちゃんと亜里沙が一緒にいることにしたいと頼まれた。