女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
まぁ、それくらいなら頼まれてやっていい。勅使川原に貸しを作れるのだから…
勅使川原からの話を聞き、俺は考えるのだ。
「…れお?呼び出し?」
「あっ、違うよ。亜里沙には、もうしばらく、ここにいてもらうことになったから、理央のお披露目会には戻らない」
「えっ、どういうこと?」
亜梨沙には、彼女にとって大事な部分だけ掻い摘んで説明しておく。
俺がこれからたてる計略は、樹里ちゃんも巻き込んでしまうだろう。これは、勅使川原にも久世家の誰にも、亜里沙にも知られてはいけない謀。
上手く誘導できるように、俺が動かなければならない。
しばらくは、会うこともままならないだろう彼女を抱きしめて、2人で旅行先へ気持ちを飛ばし、時間を過ごした。
約束の時間になり廊下に出れば、勅使川原が部屋から出て来て、律儀に頭を下げていくが、俺の腹の中を知れば、平静でいられないだろうと見送った。
戻った俺は、亜里沙を抱きしめていた。
ごめんな。
これも全て、内緒で旅立つ為に必要なことなんだ。そして、憂いは取り払っておきたい、俺のわがままだ。
彼女を送り出し、樹里ちゃんとの合流を確認した俺は、反対方向へ歩いていく。
2人の逃避行に向けて、暴走しだす。