女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
「そうだな。じゃあ時間になったら、亜里沙と理樹は戻ってきなさい。梨沙は、勉強頑張るんだぞ」
「はーい」
まったく、末っ子だから猫可愛がりして甘い父だ。梨沙が勉強などするはずないのにと、理樹と顔を見合わせたのだ。
父達が会場に戻り、早速、理樹は行動する。
「俺、時間まで部屋で寝てるわ」
久世家の控室に借りた部屋とは別に部屋を自分でとっていた理樹は、さっさと出ていく。
多分、どこかの女と待ち合わせしているのだろう。
「お姉ちゃんは、ここにいるの?」
「とりあえずはね」
「ふーん。千紘さんや玲央くん来てたよね。よかったの?」
「何が?」
「…別に」
千紘も玲央も同じ歳なのだが、梨沙は、千紘にさんづけするのは、あまり話したことがないからだろう。
兎に角、梨沙の本来の質問の意味に答える気は、私にはなかった。
誰も口にはしないが、そろそろ、私の婚約者にどちらかを選択する頃がきたのだ。
内々の許婚候補でもあり、大切な友人の2人。そのどちらかを選ぶなど、私にはできないで逃げてきた。
けど、最近になって、私の心は玲央に傾いてきている。
その証拠に、今か今かとソファに座り、時間が来るのを待っているのだ。