女王様を甘やかしたい〜 愛の逃避行は計略的に
 
顔を覗こうとしたら、玲央が涙を流している。

「どうしよう?お医者さんよぶ?」

涙を流すほど、苦しいのかと慌てているのに、目の前の男は、今度は笑いだす。

「あはは、大丈夫だよ。僕が医者だってこと忘れないでよ」

「わ、わかってるよ。でも、医者でも、どうにもできないことあるでしょう?」

「そうだね。亜里沙を思う気持ちが溢れてどうにもできないよ」

そういうなり、頭部を引き寄せられて、私からキスしたかのように唇が重なっていた。

だが、今度は、触れるキスとは違い、唇を喰まれている。

角度を変えて、何度も、何度も、上下の唇に下から喰らいつく男と一緒に、床にズルズルと落ちていき、キスの猛攻になす術なく、玲央の膝上に鎮座していた。

見つめられる視線を感じながら、目を閉じているが、ビンビンと感じる欲情の気配。

あぁ…このまま。

その時、タイミングよくなのか、悪くなのか、ドアのベルが鳴った。

先ほど頼んだワインだろう。

キスを解いた玲央は、私の肩におでこをつけて、甘いため息をつく。

玲央のその感情がなんなのかは、わからないが、私としては、残念のような気もしていた。

ワインとグラスを受け取った玲央は、奥のテーブルでワインの栓を開けグラスに注ぎ出した。
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