パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
 口の周りを拭ってやると、「ないー!」と抵抗を見せるも一瞬。そのまますっと夢の世界へと入っていってしまう。

「ふふっ、颯麻くん可愛いなぁ」

 隣の大輝がそう言って息子の顔を覗き込む。
 その近さに、私は思わず息を飲んだ。

「ご、ごめんねせっかく来てくれたのに寝ちゃって!」

 慌てて立ち上がる。私は隣のリビングに座布団を二枚並べ、その上に颯麻を寝かせた。お気に入りの毛布も持たせてやると、そのままむにゃむにゃと寝入ってしまった。

「じゃ、うるさくしちゃいけないからもう帰るわ」

 背後で、大輝がそう言って、両親に挨拶をした。

「あら、もう? もっとゆっくりしていっても――」

「いえ、颯麻くん起こしちゃっても嫌ですし。颯麻くんも、おじさんも元気そうな顔見れて俺は安心したっつーか、明日からまた頑張ろうって思えたんで、良かったっす!」

 大輝はそう言って立ち上がると、さっさと玄関へ行ってしまった。
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