パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「大輝!」

 玄関を出て行った大輝を追いかけた。
 颯麻のためにしてくれたのに、まだお礼を言えていなかったから。

 一月ももう終わりだというのに、今日は日差しが温かく風もない。

 ぽかぽかとした外の空気、きらきらと輝く太陽の下。お日さまみたいにニカっと笑って、大輝が振り向いた。

「梓桜、おじゃましました!」

「あ、あの、ありがとうね!」

 その笑顔に見惚れてしまいそうで、慌てて声を張り上げた。すると、大輝はこちらに戻ってくる。キラキラの、爽やかの笑顔のまま。

「俺も。久しぶりに家族に触れて、なんか嬉しかった」

 大輝はそう言いながら、なぜか私の頭をポンっと撫でる。

「おじさんもおばさんも、優しい人だな。梓桜が優しいのも、納得」

 そんなことない。
 私は、優しくなんてない。

 けれど、この面映ゆい空気を壊したくなくて、そんなことは言えなかった。

「母さんと父さんを思い出した。二人が生きてたら、梓桜のご両親と似てたかもな、とか――」

 大輝はそう言って私の頭から手を下ろす。その手をジャケットのポケットに突っ込んで、空を見上げた。
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