元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 大輝の車が見えなくなるまで、玄関の前で見送った。玄関の扉をあけると、そこには父と母が立っていた。

「大輝、帰ったよ」

 言えば、父も母も顔を優しくほころばせる。

「いい子だな、大輝くん」

「うん。高校のころから、すごい優しい人だった」

 部屋に上がりながら父と母に伝えると、母は「友達?」と意味深に聞いてくる。

 父が再びダイニングに座ったから、私は食べ終わった食器を流し台に運んだ。母がお湯を沸かして、お茶を淹れている。

「あのね……、付き合ってたんだ。大輝と、高校の頃」

「やっぱりそうだったのね」

 流し台の隣で急須からお茶を注ぎながら、母がとふふっと笑った。

「消防車のイベント行った時にたまたま会ってね。私がシングルマザーだって話したから、そういう情もあって、色々気にかけてくれてるんだと思う」

 言いながらスポンジを手にしたら、母に制されてしまった。私は、渋々スポンジを置いて、ダイニングに腰かける。母も緑茶を三人分、テーブルに置くと座った。

「高校の頃にさ、名古屋に引越した友達の話したことあったでしょ? 覚えてる?」

「ご両親が亡くなったって――もしかして、彼が?」

「うん、大輝」

 母の質問に答えながら、当時のことを思い出し目頭が熱くなる。母の淹れてくれた熱いお茶は、私のそんな顔の熱をごまかしてくれた。

「そうだったのね……」

 母が言う。
 父は黙って、私たちの会話を聞いていた。
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