元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
 チャイルドシートから降ろした颯麻を抱きかかえて、大輝の元へ。ここがどこか分かっていない颯麻は、キョロキョロと周りを見回している。

「俺の家だよ、颯麻くん!」

 私の隣に立った大輝は、颯麻の頭をそう言って撫でた。颯麻は、大輝がこの間家に来てくれたことを覚えていたらしい。

「はしご車ー!」

 さっそく、手に持っていたミニカーを大輝に見せた。大輝は「お、俺があげたやつ!」と嬉しそうに顔をほころばせた。

「どうぞ」

 大輝が玄関の扉を開ける。
 懐かしい匂いがした。
 陽だまりみたいな、佐岡家の匂い。

 けれど、当たり前だけれど、玄関に置かれた靴は大きな大輝の靴二足だけ。それだけで、私は寂しいと思ってしまう。

 そうか、大輝が寂しそうに見えたのは、私が寂しかったからなんだ。不意にそう思って、自分の気持ちを大輝に投影していただけの自分にまたがっかりする。

「お邪魔します」

 そんな気持ちをごまかすように、颯麻の靴を脱がせ、私も靴を脱いで佐岡家に上がらせてもらった。
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