元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「仏壇、こっち」

「うん、覚えてる」

 案内してもらいながら、懐かしい間取りのお家を見回す。
 部屋の隅にダンベルが置いてあったり、消防系の雑誌らしいものが積まれてあったりするが、基本はあの頃と変わっていない。

「颯麻くんは、俺と一緒にいようか」

 大輝がそう言って、私の腕の中の颯麻を覗いた。

「いいの?」

「ん、火とか使うから危ないだろ。だから」

「ありがと……」

 颯麻を床に下ろしてやると、さっそく消防車が表紙の雑誌の方へ向かう。

「いいだろう、コレ。読むか? かっこいいの載ってるぞ!」

 大輝はテーブルに雑誌を置くと、立ったままの颯麻の隣に胡坐(あぐら)をかいて座った。それから、視線で私に「行け」と促してくれる。

「スーパーアビュス!」

「アンビュランス、な」

 そんな二人のやりとりを背中に聞きながら、「ありがとう」と大輝に心の中でお礼を言って、私は仏壇へ向かった。
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