元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜

15 家族でも恋人でもないけれど

「公園、行く?」

 と大輝が言ったのは、それからしばらくの後だった。
 きっと、私が黙ってしまったからだろう。大輝に申し訳なさが募り、同時に何もできない自分にいら立つ。

 颯麻は「こーえん!」と大声で叫ぶ。

「よし、行くか!」

 大輝がそう言って、立ち上がった。

「覚えてるか? 高校の頃、梓桜が俺んちから帰る時、まだ別れたくないなーって時に寄った公園」

「……うん」

 大輝は、私との思い出を今も大切にしていてくれる。
 それなのに、私は――

 ダメだ、そんなこと。今は、大輝の優しさを無下にしちゃいけない。

「しゅー、ある?」

 颯麻に訊かれ、大輝の方を振り向く。

「滑り台、まだあるかな?」

「あるある! 何なら遊具新しくなってて綺麗だぞー」

 大輝は言いながら、仏壇の火の始末をしていた。
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