パパになった消防士は初恋妻を燃え滾る愛で守り貫く
「だーち、もっかい!」

 颯麻がそう言って、走っていく。それを大輝が追いかけていく。

 そんな二人は、この公園の親子連れになじんでいる。
 まるで親子のよう。

 もしも大輝が、この子の父親だったら。
 そんなたらればを考えて、ため息を零した。

 私がなりたいのは、ちゃんと一人で立っていられる、独立した大人。そうならないと大輝の隣に立てないと、自分で決めたのに。

「あ、あ゛ーーー!」

 突然、息子の泣き声が聞こえてはっとした。

 見れば、颯麻は尻餅をついている。その前で、颯麻よりもすこし大きな女の子が、おろおろしながら「ごめんね」と颯麻に声を掛けていた。

 どうやら、颯麻と女の子がぶつかってしまったらしい。

 慌ててその場へ行くも、大輝が先にさっと颯麻を抱きかかえる。大輝はそれから、颯麻を手に抱いたまましゃがんだ。

「おー、謝れるのか。君は偉いなー」

 颯麻をあやすようにその背中をよしよしと撫でながら、大輝は女の子にも笑みを向ける。

「大輝!」

 駆け寄ると、颯麻がこちらを見上げて「ママ―!」と手を伸ばす。
 その必死な泣き顔に、私は颯麻を抱き上げた。
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