元カレ消防士からの爽やかな溺愛 〜厚い胸と熱い思いで家族ごと愛されて〜
「聞こえてた?」

 しばらくして公園に戻ってきた大輝が、ため息交じりにそう言った。
 取り繕っても仕方ないので、こくりと頷く。

「ごめんな、梓桜」

「あー、うん。別に大丈夫」

「アイツらもアイツらだよな。こんなところで堂々と俺が不倫してるみたいな言い方しなくても……はぁ」

 大輝は言いながら、まだ「ポンプ車ー!」と無邪気に喜ぶ息子に視線を向けた。

「そういうの、話しやすい雰囲気なんでしょ? いいじゃん、大輝らしい」

 私が言うと、「でも俺的にはなんかヤダ」とまたため息をついた。

「梓桜のこと、アイツらには『友達だ』って言ってるのに、ちょっと距離近いってだけでネタにして。俺は何て言われても別にいいけど、梓桜まで変な目で見られるのはヤダ」

 そうか、消防署内では私は大輝の『元カノ』で『友達』なんだ。

 私がシングルマザーだと言っていないのは、あの日、私が大泣きしてしまったからだろう。
 でも、今はもう、大丈夫。

 だから。

「あの――」

 私はそこにいた、消防士さんに声を掛ける。
 振り向いたのは、橋本さんだった。
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